フランスの陶芸家マティルド・マルタン(Mathilde Martin)は、ブルゴーニュの土を通して温かく包み込むように、空間に平穏と調和を与える作品を作り出す。
「時間、物質、そして手が導くデザイン」という彼女の哲学は、自身の名前からとった陶芸アトリエ、マティルド・マルタンを通して、素朴ながらも繊細に手が残した痕跡、均一ではない厚さ、光の当たり具合によって変化する艶と光沢を持つ陶器として形になる。様々なファッション、コスメ、ライフスタイルブランドとのコラボレーションを通して、シンプルとエレガントの間(はざま)にある精緻な調和を絶えず探求するマティルド・マルタンとのインタビュー。
@mathildemartinceramic
Urbanic(以下U):マティルド・マルタン(Mathilde Martin)というブランドは、どのようにして誕生したのでしょうか?
Mathilde Martin(以下M):7歳の時に初めて陶芸に接してから、陶芸は私の人生において大切なパートナーになりました。23歳の時、本格的に陶芸に専念する決心をし、ソムリエとしてのキャリアを絶ちました。陶芸家になったことで、長い間夢見てきたけれど勇気が足りなくてチャレンジできなかった道を探し、創造力を発揮することができました。マティルド・マルタンは、そんな私の夢が実現されたブランドであり、陶器と芸術に対する愛が込められた私のオリジナルティーの象徴でもあります。
U:マティルド・マルタンを簡潔に説明するとすれば?
M:有機的なフォルムと繊細な質感、そしてシンプルとエレガントの間にある精緻な調和を探求する作業。
U:マティルド・マルタンならではの独創的な技法や特徴としては、どのようなものがありますか?
M:私の作業は天然釉薬を何重にも重ね、手で作り上げるテクスチャーを加え大地の荒々しい美しさを表現することに重きを置いています。精密さと即興性の間でバランスを維持することに努めながら、材料本来の特性を表そうとしています。それぞれの作品は固有であり、わずかな不完全さが作品の個性をより際立たせていると思います。
U:様々な陶芸の形態の中で、特に花瓶にフォーカスをあてることになった理由は何ですか?
M:花瓶は流行りに左右されないので魅力的であり、なおかつ機能的で装飾的なオブジェです。フォルム、質感、比率を全て実験することができる完璧なキャンパスであり、花や木の枝のような自然の要素と組み合わさるとより美しくなります。誰かの生活空間に溶け込む花器を作るという詩的な面もあります。
U:アーバニック30の顧客に紹介することになる作品について、詳しく教えてください。
M:今回のコレクションは自然の柔軟性と有機的なフォルムが持つ静かな力から始まりました。それぞれの作品は、土本来が持つ色と柔らかなうねりが特徴です。時間と自然の要素によって形成された風景を反映しました。
注目すべき点は、荒々しい質感と繊細な質感との相互作用です。対比する2つの質感が調和をとりながら混ざり合い、見る人に自然と手を伸ばさせ共感を導き出します。
このコレクションは、平穏さと調和を伝えるために、どのような空間にでも自然と溶け込むことができるようデザインされています。
U:作品活動において影響を受けたデザイナーや芸術家、または文化的な要素はありますか?
M:芸術と機能性が完璧な調和をなしているイサム・ノグチ(Isamu Noguchi)の彫刻品、ルーシー・リー(Lucie Ri)の洗練された陶器、ジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé)やシャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand)といった建築家のシンプルさとバランスが際立つモダンなデザインから沢山のインスピレーションを受けます。
そして尊敬するブルレック兄弟(Ronan & Erwan Bouroullec;家具をはじめとする産業デザイン分野で頭角を現しているフランスのデザイナー、韓国のSerif TVも彼らによってデザインされた)、エンゾ・マリ(Enzo Mari)、古代花瓶の多彩な形も、フォルムと調和に対する私の探求に深い影響を及ぼしました。
また、陶芸の可能性について幅広く考えることにおいては、私とスタイルは異なりますが大胆な色と質感を使う現代陶芸家たちからも多くの刺激を受けています。
U:特定の都市からインスピレーションを受けることもありますか?
M:私が生まれ育ったパリから沢山のインスピレーションを受けましたが、活気溢れる他の都市からもインスピレーションを受けることがあります。最近訪れたニューヨークは果てしない創意性や多様性に満ちていて強烈な印象を受けました。ただ、陶芸は場所を超越するものだと思っています。アジアの陶芸家たちの精密さであれ、モロッコの職人たちの真摯な姿勢であれ、その場所の文化的な本質と技術によって形成されるからです。
U:陶芸の作業において必ず必要な過程は何だと思いますか?
M:材料に対して開かれた心を持ち、粘土が導くままに身を任せることです。初期モデルやアイディアに執着せずに作品が自然に進化することを見守りながら、作家と道具が真に向き合って調和することが大切です。
U:陶芸の最も大きな魅力は何ですか?
M:触って感じることができ、手で作り上げた永続的な何かと人々を繋げる力を持っている点です。私にとって最も楽しい瞬間は、作品が初めて釜から出てくる時です。火の中で釉薬とフォルムがどのように変化したのかを確認することは、いつも魔法のようであり予想することができない経験です。
U:作品を通してマティルド・マルタンが伝えたいメッセージは?
M:人々の家の中に温もりと平穏をもたらし、楽しさと創造力を呼び起こす大切なオブジェになってほしいです。マティルド・マルタンを通して不完全さを包み込み、日常で私たちを取り巻くモノと自然世界との関連性、そしてシンプルさの美学を発見することを願っています。